金工芸作家 インタビュー金工芸作家
インタビュー

石川広明 <石川工房五代目>

――金工芸の道を選んだきっかけをお聞かせください。

高校を出て働くという時に、「スーツを着る仕事はしたくない」とまず思いました。自分には黙々とものを作る仕事が合っているかもしれないと思い、はじめて金工芸に興味を持ったのです。工房を継ぐように言われたこともないので、父がどんな仕事をしているかもよく知りませんでした (笑)。あと、見よう見まねで作った銀細工を、ある人がお金を出して買ってくれたのです。「お前が二度と作れない、初めての作品だから」と言って。その人にちゃんとしたものを作ってお返ししたいと思ったのも、きっかけでした。

――お父さんのもとで修行をされたのですか?

親子だとうまくいかないことも多いらしく、伯父も職人でしたので、まず伯父のもとで2年ほど修行し、その後、奥山峰石先生に5年ほど教えていただきました。一人で作るようになってからは、浅草の職人さんたちにずいぶんしごかれました。金工芸には磨き専門、仕上げ専門の職人さんがいて、出来上がった商品を持って行くと、だめなところが少しでもあると返されてしまうのです。その厳しさのおかげで技術を磨くことができたと今は思っています。

――今まで作られたもので、印象に残っている作品は何ですか?

4.5kgの金で作った「太刀」でしょうか。初めての大きな作品だったのと、どう作れば一番いいのか、どうすれば修理もしやすいのかなど、いろいろ考えるだけでも1ヵ月ほどかかりました。そして、制作中に東日本大震災が起こり、思い悩んで手につかなかった時期もあり、結局、完成まで半年以上かかってしまいました。自分としては「やりつくした」という点で思い出深い作品です。

――今後、どのような作品を作りたいとお考えですか?

緻密な技術が活かされ、人気シリーズとなった猫。

ひと言でいうと「人が作らないもの」ですね。干支や縁起物が多い金工芸ですが、身近な「猫」をモチーフに作ってみたら、人気のシリーズとなりました。湯沸しや湯呑などの定番も、今までにない新しい発想で作ることができるはずだし、自分としてはさらに進んで「まさか、これを金で作るとは」というものを突き詰めてみたい。ゼロからまったく新しいものを作る。それも金工芸の魅力だと思います。

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